古着辞典 > タグの見分け方

マリンスタイルを基調としたアメリカンカジュアルブランド、NAUTICA(ノーティカ)。90年代にはヒップホップシーンとの結びつきで一気に人気が爆発したこのブランドは、近年の90年代ブームの再来もあって、古着市場で再び注目を集めている。当時の勢いを知る人ほど、その再評価に胸を熱くしているはずだ。タグに描かれた浮き輪や船のモチーフ、文字の書体を読み解くことで、そのアイテムがおおよそどの年代に作られたのかを推測できることが知られている。この記事では、NAUTICAのタグに現れる年代のサインを、古着初心者の方にもわかりやすいように整理して紹介していく。日本での知名度はさほど高くないブランドだからこそ、知っている人だけが得をする古着選びの視点とも言えるだろう。周囲があまり知らないブランドの知識を持っているというのは、古着探しにおいてちょっとした優越感を味わえるポイントでもある。
NAUTICAは1983年、アメリカのニューヨークで、台湾系アメリカ人のデザイナーによって設立された。異文化を背景に持つ創業者の感性が、独自のブランドカラーを形作る土台になったと言えるだろう。ブランド名はラテン語で船を意味する言葉に由来しており、その名の通り、伝統的なマリンスタイルを基調とした服作りを一貫して行ってきた。当初はカタログ販売を中心に展開されていたが、次第に実店舗も広げながら、アメリカを代表するライフスタイルブランドへと成長を遂げていった。通信販売という手堅い方法から始まり、着実に事業を拡大していったという経緯も、堅実な経営姿勢を物語っている。
もともとヨットやゴルフ、テニスといった、白人富裕層のレジャー文化を色濃く反映したデザインを得意としていたNAUTICAだが、1990年代に入ると思わぬ形でヒップホップカルチャーと結びついていくことになる。当時の若者たちが、こうした上流階級的なイメージを持つブランドを自分たちのストリートスタイルに取り入れることが、ある種のステータスとして受け止められるようになったのだ。異なる文化的背景を持つデザインが、時代のうねりの中で新たな意味を獲得していったという経緯は、ファッション史において非常に興味深い現象のひとつと言えるだろう。大胆なカラーリングや生地の切り替えを得意とするデザインが、こうした文化の融合を象徴するアイテムとして受け入れられていったという流れは、単なる流行の枠を超えた社会現象としても捉えることができる。NAUTICAというブランドは、この時代の空気感をそのままタグやデザインに刻み込んでいる。
NAUTICAは日本国内において、大手スポーツ用品メーカーがライセンス契約を結び、代理店として展開を担っていた時期がある。しかし2008年、この契約は終了し、日本国内の店舗はすべて閉店するという形でブランドは撤退することになった。かつては国内でも一定の知名度を誇っていたブランドが姿を消したことで、皮肉にも古着市場における希少価値はむしろ高まっていったとも言える。現地でのアイテム調達が中心となる今、当時のタグ知識を持っているかどうかが、掘り出し物との出会いを大きく左右するポイントになっている。

NAUTICAのタグは、時代とともに大きくデザインが変わってきた。もっとも古い時代は白地に浮き輪のようなモチーフを配した「浮き輪タグ」、その後は紺地にブランド名がすべて小文字で入る「小文字タグ」、そして近年はブランド名が大文字で記載されるタグへと変遷している。まずはこの大分類のどれに当てはまるかを見極めることが、年代判別の出発点になる。地色と文字の書体という二つの視覚的な特徴だけでも、大まかな時代帯をかなり絞り込むことができる、取り組みやすいチェックポイントだ。
もっとも古い時代の浮き輪タグには、中央に小さな船のイラストが描かれているという特徴がある。この船のモチーフは、その後の小文字タグの時代になると姿を消し、ブランド名だけのシンプルなデザインへと切り替わっていった。船のモチーフの有無を確認することで、もっとも希少な初期の個体かどうかを見分けることができる。小さなイラストだが、拡大して確認すれば見落とすことはなく、慣れれば一瞬で判別できるようになるポイントだ。

ブランド名の下に「メイド・イン・USA」という表記が入っているかどうかも、年代を見分ける重要な手がかりになる。この表記は1980年代から90年代後半頃まで長く使われていたとされ、近年になって価値が見直されてきているポイントでもある。当時は当たり前だった国内生産の証が、時代を経て希少価値を持つようになったという変化は、多くのアメリカンブランドに共通する興味深い流れのひとつだ。表記が無くなった時期以降のものは、生産国がタグの下部に別途記載されるようになっていく。
1990年代には、アクティブなパフォーマンスラインとして「コンペティション」というシリーズが展開されていた。このシリーズのタグには大きく刺繍でこの名称が入っており、デザイン性の高さから古着ファンの間でも特に人気の高いタイプとされている。この表記があるかどうかで、通常ラインとは異なる特別な一着かどうかを見分けることができる。近年になってこのラインがアメリカ本国で復活を遂げたという経緯もあり、当時のオリジナルアイテムへの注目度もあわせて高まっている。デザイン性の高さと歴史的な背景の両方を兼ね備えたこのシリーズは、コレクターの間でも特別な位置づけを与えられている。

アメリカ製の表記が減っていくのにあわせて、タグの下部には生産国を示す表記が加わるようになった。この表記の有無や位置を確認することで、90年代後半以降のアイテムかどうかを判断する材料になる。生産国が多様化していく過程は、ブランドの生産体制がグローバル化していった時代の流れをそのまま反映していると言えるだろう。アジア諸国での生産が拡大していくにつれて、タグに記載される国名の種類も豊富になっていき、この表記の変遷を追いかけるだけでも、当時の世界的な繊維産業の動向をうかがい知ることができる。

| 時期の目安 | タグの通称 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1980年代前半 | 浮き輪タグ | 白地に浮き輪モチーフと船のイラスト。現存数が少ない希少なタイプ |
| 1980年代後半〜1990年代 | 小文字タグ | 紺地にブランド名がすべて小文字で入る。「MADE IN U.S.A.」表記が続く |
| 1990年代 | コンペティションタグ | アクティブラインの専用タグ。デザイン性の高さで人気が高い |
| 1990年代後半〜2000年代 | 紺タグ(生産国多様化期) | アメリカ製表記が減少。タグ下部に生産国表記が加わる |
| 2000年代以降 | 大文字タグ | ブランド名が大文字表記に。白地に紺文字の意匠へ回帰 |

実物を確認する際は、まずタグのデザイン分類がどれに当てはまるかを見極める。次に船のモチーフの有無を確認し、続いて「MADE IN U.S.A.」の表記があるかを見る。そのうえで「COMPETITION」の表記があるかを確認し、最後に生産国表記の位置を見て、これまでの情報と矛盾がないかを突き合わせるという順序で進めると判断がしやすい。

経年でタグが失われている個体に出会うことも珍しくない。そのような場合は、ボタンやジッパーに刻まれたメーカー名や、襟の裏側にエンボス加工で浮き出たブランド名を確認するとよい。タグ以外の細部にも製造時期を推測するヒントが隠れていることが多く、こうした副資材まで観察する習慣をつけておくと、判断材料が格段に増える。ボタンやジッパーは経年劣化に強く、タグよりも状態良く残っていることが多いため、タグが失われた個体を諦めずに見極めるための最後の手がかりとして重宝する。

オンラインで購入を検討する場合は、タグ全体の写真だけでなく、船のモチーフや刺繍部分を接写した写真もあわせて依頼するのがおすすめだ。実店舗で確認する場合も、タグをめくって生産国の表記まで確認する習慣をつけておくと、判断材料が格段に増える。あわせて、生地の切り替えやカラーリングの大胆さといった全体のデザインも見ておくと、より確からしい年代推測につながる。90年代特有の派手な色使いは、写真だけでも比較的判別しやすい特徴のひとつであり、タグの情報とあわせて確認することで、より確度の高い判断ができるようになる。

A. ブランド設立からごく短い期間にしか使われなかったとされているためだ。船のモチーフとともに描かれるこの意匠は、現存数自体が少なく古着屋でも見かける機会は限られている。
A. アクティブなパフォーマンスラインならではのデザイン性の高さが評価されているためだ。近年アメリカ本国でこのラインが復活したことも、あわせて注目度を高めている。
A. 大まかな目安にはなるが、それだけで断定するのは避けたほうがよい。タグのデザイン分類や「MADE IN U.S.A.」表記の有無とあわせて確認することが大切だ。
A. そうとは限らない。2000年代以降に展開された現行ラインの通常タグであり、初期の浮き輪タグとはデザインが似ている部分もあるが、別物として扱われている。
ヴィンテージ市場でNAUTICAのアイテムに価格差が生まれるのは、単に古いか新しいかという単純な話だけではない。使用期間が短かった希少なタグデザインや、当時の生地の質感、カラーリングの大胆さといった要素が組み合わさることで、コレクターの間での評価が変わってくる。マリンスタイルという上品な出自を持ちながら、ストリートカルチャーとも結びついてきたブランドだからこそ、タグから読み取れる情報は単なる「年式」以上に、そのアイテムがどのような時代の文化の中で作られたのかを知る手がかりでもある。上流階級的なイメージとストリートの熱狂という、一見相反する二つの世界を橋渡ししてきたブランドの歴史を思うと、一枚のタグから読み取れる物語もより深く感じられるようになる。

NAUTICAのタグから年代を読み解くには、タグのデザイン分類、船のモチーフの有無、「MADE IN U.S.A.」表記の有無、「COMPETITION」の表記、生産国表記の位置という複数の要素を組み合わせて確認していくことが欠かせない。日本での知名度はさほど高くないブランドだからこそ、タグの変遷を知っているかどうかで古着選びの視点がぐっと広がる。ひとつずつ着眼点を確認しながら、自分の手元にある一着の背景を紐解いていってほしい。日本ではあまり語られてこなかったブランドの奥深い変遷を知るという体験そのものが、他の定番ブランドにはない新鮮な発見につながるはずだ。
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